夜中に髪を切る

花の色
ざくっ、ざくっ。
夜中に一人で髪を切る癖がある。

洗面台の大きな鏡の前で鋭い髪切鋏をすべらす。

流しに積もる私だった一部。
私から切り取られた途端に変わってしまった髪の色に驚く。
命の色。

去年と今年の間に大切な人の命が消える場面に立ち会った。
穏やかに眠るように旅だったその人の顔を思い出す。

いつかは私も只の肉片になる。

冬来たりなば春遠からじ。

ファーストフィルム
縁あって私の元にやってきたカメラが壊れてしまった。
修理をしようと思ったら買った金額の倍ほど掛かってしまうとのこと。

どうしようかなぁと悩みながら、不便なまま使っていたら、前からほしいなぁって思っていたカメラが手にはいった。
新しいカメラが手に入ったその次の週末は小春日和だったので近所の河原へ出掛けた。

願いは思い続けていると必ず叶うもんだんだよ。

いままで回り道ばかりして来た私は気軽にはそんなことは言いたくないけど、運命に少しは味方されてる時もあるんだな。って
まだ冬の匂いの風が吹く土手の上で、背後から横へ吹き抜ける突風に背中を押されながらそんなふうに思っていた。

夢現

夢現
うつらうつらと微睡みの中で、心地よい長い夢を見ていたのかも知れない。
大事に思ってたものが、シャボン玉のようにぱちんと弾けて消える。
遅かれ早かれこうなるような気はしてて、心のどこでホッとしてる。

守りたい私よ泣かないでと壊したい私が笑ってる。